違うっていいね 「せかいのひとびと」
俵万智さんの息子さんが二歳のとき「あの本がいい」と指さしたのがこの絵本でした。
せかいのひとびと
- 著者:ピーター・スピアー
- 出版社:評論社
英語でいうと、なあに
国際化の時代・・・・・・なんていうと、堅苦しいけれど、息子を取り巻く環境を見ていると、ごく自然にそれが感じられる。
二歳の頃、友達にジョジアくんとう男の子がいた。彼がときどき英語を話すのを聞いたためか、息子はものすごく英語に興味を持った。「ジョジアくんはね、から揚げのこと、チェッキンって言うんだよ。ポテトはポレイローだよ」と観察も怠りない。
「英語でいうと、なあに?」というのが、そのころの口ぐせで、ある日、「ねえ、英語でいうと、抱っこはなあに?」と聞かれた。
抱っこ? 正直言ってお母さんにもわからない。そんなの、ジョジアくんに聞いてよ・・・・・・と困っていると、「もしかして、どぅわっこ、じゃない?」と、口をとがらせて、英語っぽく発音してみせた。たぶん違うとおもうけど、なんだか感じは、よく出ている。
幼稚園に行くようになると、両親が東南アジアの人や、アフリカの人などもいて、子どもたちの肌の色もさまざまだ。そういえば息子のクレヨン、昔は「はだいろ」と表示されていた色が「うすだいだいいろ」になっている。日本人の肌の色をもって「はだいろ」とするのは、確かに不自然なことだ。
「あの本がいい」
先日、本屋さんのショウウィンドウを見ていて「あの本がいい」と息子が指をさした。
『せかいのひとびと』。
表紙には、さまざまな服装をした、さまざまな国の人々が、びっしりと描かれている。今「せかいのこっき」を眺めるのが趣味(?)なので、「せかいの」という言葉に惹かれたのかもしれない。
世界中の人々の、顔や髪や肌の違いにはじまって、おしゃれや趣味の違いが描かれている。いろんな国の、遊びや食べ物や家の様子も紹介される。仕事、言葉、性格、宗教、貧富や身分の差まで・・・・・・。
ありとあらゆる面からの「違い」がここにはある。服装などの客観的な要素も、感情などの主観的な要素も、たぶん意図的に並列されている。その一つ一つを図鑑的にたどっていくだけでも、なかなか楽しい。
「違うっていいね」が伝わってくる
私が「わ~、ほんとだ、いろいろあるね」と大ざっぱに片づけて、次のページに進もうとすると「まだ、ダメ!」と言って、息子は一つ一つの絵に、熱心に見入っていた。
違っているけれど、同じ地球で、同じ太陽に照らされて、そして最後は誰もが死ぬ、というメッセージも、さりげなくはさまれている。これも大事なことだが、それで終わらないのがこの絵本のいいところだろう。違うけれど、結局死ぬんだから同じ、ではつまらない。
最後の連続見開きページが素晴らしい。違うっていいね、と言うことが、二枚の大きな絵を通して、理屈抜きに伝わってくる。
(子どもと本と私② 「かーかん、はあい」 俵万智 朝日新聞出版 より)
「違うっていいね」素敵なメッセージですね。
違うから知りたい! 違うから分かりあいたい! この本を読んだ子どもたちがそんな気持ちになれたらいいなあと思います。「地球上には何十億人の人がいて、でも、ひとりとして同じ人はいない」とはじまるこの絵本。
外見や文化だけではなく、「同じことでもわらう人もいればなく人もいる」と個々の感受性のちがいにまでふれて、人がいかに多様性に富んでいるかを語ってくれます。
二歳の時にこの本に興味を持った俵万智さんの息子さん。食い入るようにページを見つめる姿が目に浮かぶようですね。
小学校高学年になっても、さらに違った視点で興味を持てる本だと思います。
(広報担当 Y.N)
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