なぜ本好きになったのか? 【阿刀田高さん 5~6歳のころ】

06-27-2023

前回は阿刀田 高(あとうだたかし)さんの母の膝の上で聞いたお経が言葉への興味の原点になったという1~2歳の頃の記憶でした。
今回は、5~6歳の思い出です。

気が付いたときはもう本が好きだったんです

ある時、講演会の後、廊下で年配のご婦人に呼び止められ、「子どもの時から本がお好きだったんですか。どうして本を好きになりましたか」と尋ねられました。
私は「気が付いた時はもう本が好きだったんです」と正直に答えたのですが、なんとなく雰囲気が悪くなり
「じゃあ、生まれつき本が嫌いなうちの孫は駄目ですね」と言われてしまいました。
後から考えると、私は質問の趣旨に答えていませんでした。もう少しましな答えができなかったか、眠れぬ夜などに考えました。子どもの頃の記憶はもうほとんど残っていませんが、それでも一所懸命思い出してみると、少し考え付くことがありました。

物の名前遊び

小学校に上がるか上がらないかの頃、兄弟や従兄弟などが集まって物の名前遊びをよくしていました。
紙に線を引いて四つの枠を作り、一人が適当な本を開いて最初にある字を読み上げると、その字で始まる「人の名前」「土地の名前」「食べ物の名前」「動物の名前」を四つの枠に三分以内で書くという遊びです。
例えば「き」なら、人の名前は「金太郎」、地名は「吉祥寺」、動物は「キツネ」、食べ物は「金太郎飴」と書くのです。
一つ書けると十点、答えが誰かとかぶると五点、三人の答えがかぶると三点というルールなので、高い点を取るためには、皆が知らない言葉を知っている必要がありました。私は「オランウータン」と言う動物の名前をこのゲームのために覚えました。
難しかったのは、「お」がつく食べ物の名前です。「おまんじゅう」や「おみおつけ」のように、敬語の「お」が付いた言葉は駄目でした。
三十数年後、八百屋の店先で「オクラ」を見た時、「これを書けば十点だったな」と思ったくらいですから、この遊びは私にとってかなり心に残る遊びでした。五~六歳の私には初めての日本語のレッスンでした。
当時の私はこうした遊びを通じて、言葉に対する関心を既に持っていたと思います。

アーノネおっさん

言葉を知る上では、絵本だけでなくラジオも重要でした。当時、「アーノネおっさん」という喜劇人がいました。
「あーのね、おっさん、わしゃかなわんよ」というギャグが一世を風靡した人で、ラジオによく出演していました。
幼い私は、「あのねおっさん」とラジオのアナウンサーは同じ人で、放送中、一人二役を演じているのだと思っていました。
言語に対する相当の飛躍がないと、こんな発想はしないでしょう。幼い頃の私はちょっと変わった思考回路をしていました。
そんな自由な気持ちで周囲の大人が使う言葉、本の中で見つけた言葉、ラジオから聞こえてくる言葉などを一所懸命捉え、言葉を知ろうとしていました。

(阿刀田 高 「本の楽しみ、言葉の喜び」「學士會会報」令和4年7月号より抜粋させていただきました。)

阿刀田さんは、「幼いころに言葉に関心を持ったことや、日本語の豊かな言葉遊びを知ったことは、間違いなく私を読書に向かわせました。」と述べています。
さらに「赤ちゃんはまっさらな頭で生まれてきて、成長の過程で様々な言葉に晒される中で言葉を覚え、論理を探り、思考力を身に着けていきます。この過程は絶対に必要です。」
と述べ、幼少期の脳の発達と読書の関係について工作機械とIT機械に例えながら「幼い頃からの読書習慣は、物を考える力を身に着ける上で重要」と、語っています。

スマホで検索すれば様々な情報が得られる今、読書は昔ほど行われなくなり、本屋さんの数がどんどん減っていきます。しかし、幼児期から10歳くらいまでは、すぐに情報を得るというより、読書をして、ものを考える力をつけることは本当に必要だと思います。
次回は、阿刀田さんのおススメの絵本についてご紹介します。

(広報担当:Y.N)

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