なぜ本好きになったのか? 【阿刀田高さん 1~2歳のころ】

06-27-2023

「本好きの子ども」になってほしい、と思う保護者の方は多いと思います。
阿刀田高(あとうだたかし)さんは、活字や書物の価値について発信し続ける作家ですが、言葉の面白さに目覚めた幼少期を振り返り、本の楽しみや活字文化を守ることの大切さについて語ってくださいました。興味深い内容なのでご紹介します。
今回は、1~2歳の思い出です。

毎月あった弟の法事

なぜ私が言葉に興味を持つようになったのか、考えてみました。
私は双子の兄として生まれたのですが、弟は1歳になる前に亡くなったので、弟の記憶はまるでありません。かろうじて覚えているのが月命日の法事です。弟は11日に亡くなったので、毎月11日になるとお坊さんが来てお経をあげていきます。法事の最中、私はいつも母の膝に抱かれていました。

母の膝の上で聞いたマントラ

私の実家は真言宗です。真言宗では読経の最後に「オン アボキャ ベイロシャノウ マカボダラ マニ ハンドマ ジンバラ ハラバリ タヤ ウン」と繰り返し唱えます。これは「光明真言」というマントラです。
1~2歳の私は母の膝の上で毎月これを聞いていたので、意味も分からないまま覚えてしまいました。
今でも空で言えますし、これが始まると「そろそろお経が終わって、お焼香だな」と思います。これが最初の記憶でしょうか。

「ハンドマ ジンバラ」 は 「兄(あんに)が死んだら」?

考えてみれば1~2歳の幼児にとっては、「ご飯だよ」という母親の呼びかけも、お坊さんの光明真言も、周りから飛んでくる言葉は等しく意味が分かりません。
それでも繰り返されるうちに覚えてしまいます。私の場合、意味が分かるようになると「ハンドマ  ジンバラ ハラバリタヤ ウン」が「兄(あんに)が死んだら腹ばいたや」と聞こえるようになりました。

言葉に興味を持つようになったきっかけはお経

そんな訳で、私が言葉に強い興味を持つようになった最初は、この「光明真言」だったと思います。
よく「絵や音楽の才能は母親の胎内にいる時から備わっている」と言いますが、私は生れた時から言葉に対する感性を少し持っていたのかもしれません。それが幼いころの周囲の環境によって啓発され、ますます言葉に興味を持つようになり、普通の子どもより言葉に注意を向ける子どもになりました。

そして読書の興味に・・・

それが結局、私を読書に向かわせたのだと思います。
以上が、「気が付いたら本が好きになりました」の意味するところです。
案外、こうした日常の中に大切なものが潜んでいると思います。

(阿刀田 高 「本の楽しみ、言葉の喜び」 「學士會会報」令和4年7月号より抜粋させていただきました。)

阿刀田さんの言葉への興味のきっかけは母の膝で聞いたお経だったのですね。
1~2歳の子どもにとって、母親の声掛けもお経も初めは意味が分からない、という阿刀田さんの言葉、確かにその通りだと思いました。
子どもの頃、つたない語彙で難しい言葉を理解しようとした経験はだれでもあると思います。
繰り返し聞く不思議な言葉・・・ それは歌でも、会話でも良いと思います。そんな中に言葉への興味のカギが潜んでいるのだと思います。
子どもを読書好きにする原点は、日常生活の中に潜んでいる・・・。
次回はさらに阿刀田さんの5~6歳ごろの記憶について、読んでみたいと思います。

(広報担当:Y.N)

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