年末の銀座を行けばもとはみな赤ちゃんだった人たちの群れ 【俵万智の子育て歌集「たんぽぽの日々」より】

11-30-2022

年末の銀座を行けばもとはみな赤ちゃんだった人たちの群れ

まったく当たり前のことなのに、普段すっかり忘れていることがある。たとえば「人は誰でも死ぬ」ということ。否定しようのない厳然たる事実だけれど、誰もがそのことを、常に思っているわけではない。むしろ忘れているからこそ、呑気に日々を過ごせるというものだろう。

道ゆく人が「もとはみな赤ちゃんだった」という事実。これを私は、忘れていたというよりは、ほぼ認識せずに四十年近くを生きていた。そして子どもが生まれて一か月たった頃、久しぶりに出てきた銀座で、急に気づいたのだった。風景が妙に生々しかった。年の瀬で賑わう街が、なにか異様なものとして目の前に迫ってきた。

新生児の世話に明けくれ、ヒトの赤ん坊というものは、なんと手間のかかるものかと驚くことばかりの毎日を過ごしていた。誰かの手助けがなくては、一日も生きていられないひ弱な存在。それなのにその小さな赤ん坊は、大の大人を右往左往させて澄ましている。「聞いてないよ!」と思うようなことの連続だった。おっぱいを吸わせるのにコツがいるだなんて(哺乳瓶みたいに、ちゅうちゅう吸えばいいのだと思っていた)。こんなにも赤ちゃんを寝かせるのに手間がかかるなんて(眠くなれば勝手に寝るのだと思っていた)。おしりふきが冷たいと怒って泣くなんて(これは甘やかし?)

そういう日々の連続から、いきなり銀座に来たものだから、何か異次元の世界にさまよい出たぐらいのインパクトがあった。そしてそのときの私の唯一の感想が「せわしなく歩いているあの人もこの人も、物を売っているあの人も、買っているこの人も、みんなみんな赤ちゃんだったのだなあ」ということだった。それはもう生々しい感触を持った思いとして胸に湧き上がった。

息子が成長した今は、どんな人混みのなかでも、あのときのような感慨は、もう湧いてこない。新生児のお世話中という独特の時間だからこそ、だったのだろう。

★子どもが生まれて1か月たったころ、俵万智さんが訪れた銀座の街。
ヒトの赤ちゃんを育てるということ、授乳をして、おむつを替えて、寝かしつける・・・かつて体験したことのない驚きの連続の中で過ごした日々。
久しぶりに、銀座に出かけたとき、まばゆい光の中にいる人の群れが別世界のような異様な光景に見えたのでしょう。
その時湧き上がってきた思いは、「みんなみんな赤ちゃんだったのだなあ。」ということ。

初めての子育てに埋没していた日々だったからこそ、湧き上がってきた思いだったと思います。
初めての子育て・・・ 全てが大発見だったころを思い出します。
(広報担当 Y.N)

出典 俵万智の子育て歌集「たんぽぽの日々」 小学館

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