俵万智さんの「かーかん、はあい!」【子どもと本と私②】には、息子さんが4歳から小学生になるまでに読んだ本についてのエッセイが載せられています。
絵本中心だった時期と比べて、「体験したことを調べる、図画や工作を楽しむ、国や社会のことを考える、言葉の不思議を味わう・・・・・・ 様々な場面に寄り添ってくれる本が、息子の日常に登場してきた、そんな時期だったようだ」と俵万智さんは述べています。
それぞれのお子様の個性に沿った「本選び」の参考にもなりますように。(広報担当 Y.N)
幼稚園に「いかない」
朝、子どもが幼稚園に行きたくないと言う。
「どうして?」「どうしても」「どこか痛いの?」「どこもいたくない」「なら、行こうよ」「いやだ、いきたくない」「そういうの、ずる休みっていうんだよ」「じゃあ、ずるやすみする」
園バスを見送ったあとも説得したが、とにかく「いかない」の一点張りだ。あまり深追いしても、いい結果にならないような気がして、とうとうその日は休むことにした。
ちなみに息子は去年、年少児ではかなり珍しい「皆勤賞」だった。それが、こんな、なんだかよくわからない理由で休むことになろうとは。とんだ変化球に、私も戸惑ってしまう。
図書館で『いやいやえん』と出会う
とりあえず、こういう時は気晴らしだと思い、二人で、近所の図書館へ出かけた。児童書の並ぶコーナーへ足を運ぶと、懐かしい一冊が目にとまった。『いやいやえん』。小学生の頃夢中になって読んだ記憶がある。息子もまた、題を見て目を輝かせた。
「これだよ。ようちえんじゃなくて、今日は、いやいやえんなんだよ!」
主人公のしげるは、ちょうど息子と同じ四歳だ。やんちゃ坊主で、叱られるようなことばかりしている。しげるがやった17のことが列挙されているページにくると、息子は大喜び。特に気に入ったのが、次の三つだ。
「はなくそを、なめました」「うわばきを手にはいて、かおをなでました」「おべんとうのとき、わざと、にんじんをおとしました」・・・・・ぐひぐひ笑って、実に嬉しそう。まあ自分も、似たようなことをやっているのだろう。
机に乗ったことを謝らないしげる。「ちこちゃんもやったから、いい」というのが理由だ。じゃあ、なんでもちこちゃんの真似をするのですねと言って、先生はちこちゃんのスカートをしげるにはかせてしまう。
「なるほど~そういう手があるか」と私が感心している横で、息子は涙目になって、本の中の先生をにらんでいた。ひどい、そこまですることはないじゃないか! と気持ちは完全にしげるの味方、というよりしげるそのもののようだ。
好き勝手できる「いやいやえん」
「いやいやえん」は、保育園に行きたくないというしげるが連れて行かれる不思議な園だ。そこでは子どもは好き勝手なことばかりしている。悪いことをしても、先生は叱らない。ケンカも、止めたりしない。お弁当は、みんな好きなものしか食べない。
ここで一日を過ごしたしげるは、すっかり自分の保育園が懐かしくなる。規則で縛らなくても、好き勝手をやりつくせば、子どもはこうなるんですよ、と囁かれているような気がした。「いやいやえん」は、子どもへの信頼なくしては成立しない。自分は、息子にとっての「いやいやえん」を作ってやれるだろうか。小学生の時には思いもしなかった感想を抱き、最後のページを閉じた。
『いやいやえん』を一緒に読んだからかどうかは、わからないが、翌日から息子は、また元気に幼稚園に通っている。
☆翌日から幼稚園に・・・。『いやいやえん』効果、絶大ですね!!
私も大好きな『いやいやえん』。子どもに読み聞かせるとき、「しげる」になりきって、思いっきり駄々っ子になってみるのも楽しいです。(広報担当 Y.N)
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