夏、子ども連れで出かける機会の多い季節です。
そんなときの必須アイテムの一つが絵本。
子どもとお出かけするときの絵本選びのヒントとして、俵万智さんのエッセイから「遠出のおともに」をご紹介します。
〇二冊の絵本
~日頃慣れ親しんでいる絵本と初めての絵本~
子どもを連れて遠出をするとき、バッグには必ず二種類の絵本を入れてゆく。
一つは、日頃慣れ親しんでいる絵本。
夜、いつもと違った環境で寝るときなどには、これがあると安心できるようだ。
そしてもう一つは、初めての絵本。
レストランや乗り物のなかで、ぐずったり、騒いだりしたときに、「これは何かな~?」と気をひくときに登場させる。
前者は決まったものだから迷うことはないが、後者を選ぶのはけっこう大変だ。気に入るか、気に入らないか、事前に試してみることができない。(やはり「初めて見る」というところが肝心なので)。
じっくりストーリーを追うものより、多少しかけのあるタイプのほうが、即効性があるようだ。これでに、うまくいった例をいくつかあげてみると・・・・・・・。
『メイシーちゃん おたのしみひろばへゆきます』
(ルーシー・カズンズ作 五味太郎訳 偕成社)
ページごとに公園の場面が現れて、矢印をひっぱると、ブランコが揺れたり池のアヒルが姿を見せたりする。日ごろ『メイシーちゃんのおうち』という組み立て絵本で、よく遊んでいたので、息子はとても喜んだ。
お気に入りの絵本がシリーズで出ている場合、その中の新しい一冊を選ぶのも、いい方法だと思う。キャラクターに親しみがあると、子どもが入っていきやすい。
『アンパンマンとシールであそぼう! たべものいっぱい』(やなせたかし原作 東京ムービー作画 フレーベル館)は、ピクニックやレストランの場面で、食べ物のシールを貼っていくのが、楽しい。子どもって、ほんとうにシールが大好きな時期があるので、そういう時にはもってこいの本だ。
〇俵万智さんおすすめの「しかけ絵本」
そして、私がおすすめする「遠出のおとも」ベストワンは『じぶんでひらく絵本』(H.A.Rey 作 若竹光江 絵 文化出版局)という四冊セットのしかけ絵本だ。
たとえば一冊目の『おかあさんとこども』はすべての右ページに動物のおかあさんが描かれていて、折り返しを開くと、子どもが現れる。単純な仕組みなのだけど、折り返しを開いたときの絵のつながり具合が、素晴らしい。左ページには語りかけのことばがあるのだが、それを開くのももどかしいという感じで、息子は夢中になってめくっていた。自分でめくれるのが楽しいし、絵の変化が本当に素敵で味わい深いのだ。
他の三冊も、それぞれにこのシンプルなしかけが、最大限に生かされた絵づくりになっている。
もちろんこれらは、遠出しない人にもおすすめで、息子も長いあいだ愛読していた。
が、初めて見せてやるなら、遠出の切り札に、と私がしつこく思う理由は、もう一つ。このシリーズはとてもコンパクトで軽い! 荷物の多い子連れには、まことにありがたい絵本なのです。
連休に乗る新幹線 子を持てば典型を生きることの増えゆく
出典 「かーかん、はあい 子どもと本と私」俵万智著 朝日新聞出版
「初めての絵本」選びのための俵万智さんからのヒントは
しかけ絵本!
シールをはる絵本!
コンパクトで軽い絵本!
列車の中でお子様がぐずりだした・・・
列車の到着が遅れて駅で長い時間待たなければならない・・・
子ども連れのお出かけは、何が起きるかわかりません。
もちろん、スマホのYouTubeやゲームなどを使うこともあるでしょう。
でも、絵本は、子どもとのコミュニケーションツールです。
書店でわくわくしながら、「初めての絵本」選びをするのも、お出かけ前の楽しい時間になるかもしれませんね。
(広報担当 Y.N)
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