俵万智さんの子育て歌集より ~たんぽぽの日々~

03-29-2021

歌人、俵万智さんは息子さんと一緒にいる時間を「たんぽぽの日々」と感じていたということです。川沿いの公園でたんぽぽの綿毛を息子さんと一緒にふうっと吹く。そして、いつか、この子も綿毛のように飛んでいくと思ったとき、息子さんとご自分の時間が限られたものであることを、切実に感じられたのでしょう。

たんぽぽの綿毛を吹いて見せてやる いつかおまえも飛んでゆくから

息子との散歩コースのひとつに、墨田川ぞいの公園があった。広々とした緑の斜面があって、春にはたんぽぽ、夏にはバッタ、秋には小犬のしっぽのようになったエノコログサ・・・・・・。ささやかではあるが、都会のなかに残された自然を、感じさせてくれる場所だった。
 たんぽぽが綿毛になると、ふうっと吹いて見せてやるのが楽しみだった。はじめは、何がおきたのか、わからないという顔をしていた。まあるい白いものが、突然ばらばらになって飛んでゆくのだから。
 そのうち、自分でもやってみたくなったようで、息子はふうふうとかわいい息をかけていた。だが、その程度の風では、なかなかうまく飛ばない。しまいにはぶんぶん振り回したり、手で綿毛をつかんで、投げたりしていた。

たんぽぽの綿毛は、たんぽぽの子どもたちだ。地面に根をはっている母親は、子どもたちのこれからを、見とどけてやることはできない。ただ、風に祈るばかり。
 たんぽぽの母さん、せつないだろうなあーそんなことを春の斜面で思うようになったのも、自分が子どもを持ってからのことだ。そしてまた、「見とどけられない」という点では、実はたんぽぽも自分も同じである。
 いつかは、この子も、この綿毛のように飛んでゆく。そう思いながら吹いていると、それはもうただの遊びではなく、息子と自分の時間が限られたものであることを切実に感じるひとときとなった。ほら、あの子はもう、あんなに遠く。ほら、この子は、こんなところでひっかかって。
 息子と一緒にいられる時間を、だから私は「たんぽぽの日々」と感じている。綿毛になって飛んで行ったらもう、あとは風に祈るばかり。

出典:俵万智の子育て歌集「たんぽぽの日々」
俵万智著
小学館(2010年)

★たんぽぽが、コンビスマイル本社のある都会の街路樹の下にも花をつけています。
たんぽぽを見るたびに、俵万智さんのこの文を思い出します。
綿毛になって飛んで行った子どもたち・・・。もっと じっくりと「たんぽぽの日々」を楽しめばよかったと思いながら。(Y.N)

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